「残業代ゼロ」法案 わかりやすい説明・メリット・デメリット(問題点)・賛成(反対)派の意見

いわゆる「残業代ゼロ」制度とは、簡単に言ってしまえば、「働いた時間ではなく成果で年収が決まる」というもので、年収1075万円以上で高度な専門的知識を持つ人を対象としています。

この制度を巡る議論は、2015年、政府がこの制度の導入を柱とする労働基準法改正案を国会に提出したことから始まりました。これに対し野党や労働組合の全国組織「連合」は「長時間労働を助長する」と反発していました。
そこで政府は年間104日以上の休日確保を企業に義務付けること、一般的な営業職を明確に対象外にすること、などを織り込み修正する方向で秋の臨時国会で成立を目指す方針を明らかにしています。

この記事では、「残業代ゼロ」制度を巡る議論を全て1ページにまとめました。
政治や専門的知識がない人でもわかりやすい内容となっているのでよければご覧ください!

残業代ゼロ制度とは?

残業代ゼロ制度とは、文字通り残業代をゼロにする=残業代を支払わない制度のことです。
しかしぱっと見の印象とは若干異なっており、法律案では全ての者の残業代がゼロになるのではなく、対象となる人が明確に定義されていて、年収1075万円以上の特定高度専門業務に従事している方が対象となります。
残業代をゼロにすることから、メディアなどでは残業代ゼロ制度と言われますが、正式には特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)と言い、「日本版ホワイトカラー・エグゼンプション」などとも呼ばれます。
※残業代ゼロ法案の正式名称は、労働基準法改正案

残業代をゼロにすると聞くと、とても怖い法律のようなイメージを抱きますが、必ずしもそうとは言い切れず、簡単に言うと、働いた「時間」より「成果」で給料を支払うという制度を目指すものです。多くの日本人に馴染みのある例で言えば、歩合制や成果型報酬制に近いと言えます。そこにフレックスタイム制のような自由な労働時間制を融合したものだというイメージです。要するに、働く時間も自由、休息も自由、休日も自由で、成果に応じて報酬が支払われるということです。その背景には日本の長時間労働の問題があり、非効率にだらだらと働くのではなく、創造的な職種が効率的に働けるようにという狙いがあります。

この制度の要点を簡単にまとめると以下の表のようになります。

残業代ゼロ制度
対象 年収1075万円以上(平均賃金の3倍を上回る)で特定高度専門業務に従事している
要件 対象労働者の同意
・委員会の決議
・職務が明確であること
内容 労働時間、休憩、休日、深夜の割増賃金に関する規定を適用しない
健康への配慮 ・対象労働者の全労働時間の把握
・24時間以内に最低○時間以上の継続した休息の確保
・22時~翌5時に労働出来るのは月に○回以内
・年104日、月4日以上の休日の確保
・同意をしなかった対象労働者の解雇や不利益な扱いを禁止

※○は詳細不明、追記予定

残業ゼロではない

よく「残業代ゼロ」を「残業ゼロ」と勘違いしている方を見かけます。しかし「残業代ゼロ」制度は残業をゼロにする制度ではありません。結論から言うと残業はそのまま残ります。「残業代ゼロ」制度とは残業代だけをゼロにする制度ですが、ゼロにするというと語弊があって、先の表の通り「労働時間、休憩、休日、深夜の割増賃金に関する規定を適用しない」のです。

残業代を支払わないことが可能であることから、メディアなどからそう呼ばれていますが、実際はそのような規定はなく、先に説明した通り、全てが自由な制度です。

いつから施行されるの?

現在、残業代ゼロ法案(労働基準法改正案)は議論の段階で成立してませんから、施行されません。
しかしもし、施行された場合、翌年平成30年からとなる可能性が高いです。
2015年(平成27年)の場合は、成立こそしませんでしたが、「平成28年4月1日から施行し、中小企業の割増賃金執行猶予については平成31年4月1日から施行する」と書かれていました。
このことから考えると、翌年平成30年からの施行、中小企業の割増賃金執行猶予については平成31年からの施行が妥当だと思われます。

2015年の労働基準法改正案概要

■目的
・長時間労働の抑制

・労働者の健康の確保

・創造的な能力を発揮しながら効率的に働ける環境の整備(多様で柔軟な働き方の実現)

■改正点
・月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への執行猶予を廃止

・時間外労働に係る助言指導に当たり、「労働者の健康が確保されるよう特に配慮しなければならない」旨を明確にした規定を新設

・使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日間は、毎年、時季を指定して与えなければならない

・企業全体を通じて労働時間等設定改善企業委員会の決議をもって、年次有給休暇の計画的付与等に係る労使協定に代えることができる

・フレックスタイム制の清算期限の上限を1ヶ月から3ヶ月に延長

・企画業務型裁量労働制の対象業務に「課題解決型提案営業」と「裁量的にPCDAを回す業務」を追加

・企画業務型裁量労働制の対象者の健康確保措置の充実や手続の簡素化等の見直し

・特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設
⇒職務の範囲が明確で一定の年収(最低1000万円以上)を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、健康確保措置等を講じること、本人の同意や委員会の決議等を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする。また、在社時間等が一定時間を超える場合には、事業主は、高度専門業務労働者に必ず医師による面接指導を受けさせなければならない。

フレックスタイム制

フレックスタイム制とは、従来の9:00~18:00までというような始業と終業時刻を決められた労働時間制ではなく、労働者が一定の定められた時間帯の中で自身の労働の始業と終業の時刻を自由に決定出来る労働時間制のことを言います。多様化する労働者の価値観やライフスタイル、年々増加し続ける職種に対応するために出来た制度と言えます。

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制とは、企画・立案・調査・分析などの働いた時間が明確にわかりづらい仕事において、実際に働いた時間をカウントするのではなく、「1日○○時間働いたとみなす」みなし労働時間を採用出来る裁量労働制のことを言います。

2017年の労働基準法改正案

概ね2015年のものと同じ
詳細が分かり次第追記します

+年104日以上の休暇取得を企業に義務付ける

+終業から始業まで一定の休息を確保する「勤務間インターバル制度」の導入

+一般的な営業職を対象外とする

メリット

・長時間労働が減少する
⇒残業代ゼロ法案の目的は「長時間労働の抑制」だと政府は説明しています。もし残業代ゼロ法案が正しく運用されるならば、仕事を早く終わらせる成果重視の労働に移行し、長時間労働問題は減少するでしょう。また、働き方も多様化し、あらゆる職種において効率的に仕事が出来るようになります。

・効率よく仕事が出来るようになる
⇒残業代ゼロ法案に記載されている「対象労働者に労働時間、休憩、休日、深夜の割増賃金に関する規定を適用しない」とは、良い意味で言えば好きな時間に働き、好きな時間に休息を取り、好きな時間を休日に出来るという意味です。これにより労働者(主にクリエイティブな仕事に従事する)は効率よく仕事をすることが出来るようになります。悪用の観点から残業代がゼロになるという意見ばかりが目立ちますが、本来の目的は、自由な働き方を実現し仕事の効率を良くし長時間労働を抑制することだと忘れてはいけません。

デメリット(問題点)

・企業に悪用される可能性がある
⇒過去にブラック企業は、法律の抜け穴を掻い潜り法律を悪用してきたという事実があります。例えば、固定残業代制は、本来なら時期ごとに労働時間に偏りがある企業や実際の労働時間が判断しづらい職種に対し、あらかじめ固定で残業代を払うという制度でしたが、ブラック企業に悪用され、未払い残業代を逃れるために利用されました。また、現在の法律でも管理職には残業代を払わなくても良いのですが、ブラック企業はこれを悪用し、一般社員に管理職の肩書を与え、残業代を支払わずにサービス残業をさせる、いわゆる名ばかり管理職が問題になりました。
法律というのは完璧ではないので、いくら悪用されないように吟味したところで法律の抜け穴を掻い潜り悪用されてしまうというリスクは常に存在する。

・長時間労働を助長する
⇒残業代ゼロ法案の対象労働者は、労働時間、休息、休日に関に関する規定が撤廃されますから、労働者を働かせ続けることが可能になります。長時間休憩や休日を与えず残業代も支払わずに働かせることも可能になります。よく無限に働かせることが出来るとか24時間働かせることが出来るといった極論を見かけますが、一応改正案には24時間以内に一定の休息をとらせる措置や深夜労働の回数を制限するなどの措置も明記されており、そのような心配は少ないと言えます(ないとは言い切れません)。

・どれだけ働いてもその対価(残業代)が支払われない
⇒働いた時間ではなく成果で年収が決まるとは、言い換えれば成果を出すまでにどれだけ長時間働こうがその対価を得られないということです。これは怖いことで、その成果に対する報酬の見積もりを誤ると、労働と報酬が釣り合わないという現象が起きてしまいます。現在の法律では、働いた時間によって報酬は基本的に上がっていきますが、残業代ゼロ法案では、成果によって報酬は一定で、どれだけその成果のために働こうがそれに合った対価を得られないのです。

・評価基準の問題
⇒従来の働いた時間=収入の労働モデルでは、この仕事の時給はだいたいこれくらいというように異なる企業間でも同じような評価基準で報酬を決定することが出来ました。しかし成果=収入の労働モデルでは、成果の大小を客観的に評価することが難しいという問題があります。同じ仕事でも企業間によって報酬が異なるなどの問題が考えられます。

賛成派の意見

・残業代ゼロでも良いが、それで暮らせるだけの給与水準に引き上げてもらうのが先だ

・仕事にはいろいろあり、例えばコンビニ店員は売上(成果)よりもいる時間が大事だし、事務処理などは同じ結果(成果)が求められるのに、定時で仕事を終わらせる人よりも残業して仕事を終わらせた人の方が残業代分手取りが多くなるのは変

・年間所得1075万とは1日当たり約7万円の利益を生める人のことで、このクラスの人はそもそもサービス残業に不満はないはず

・残業代の存在は仕事を効率的にやろうとするモチベーションに繋がらない

・残業代の存在は長時間労働を助長する

・残業代がゼロになれば仕事の生産性が上がり、社会全体が良くなる

・残業代がゼロになればお金のために残業するのではなく、自分のために残業するようになり自分自身で働く時間をコントロールすることが出来る

・総務や経理、人事、企業法務、ファイナンシャルプランナーなどのホワイトカラー労働者の場合は、労働時間の長さと成果が必ずしも比例しないため、工場労働者がモデルとなっている現行の労働時間規制はなじまない。ホワイトカラーの生産性を上げるためには、年収や年齢で対象者範囲を限定せずに、労働時間規制を外すことが望ましい

反対派の意見

・初めは年収1075万円以上の高度プロフェッショナル労働だけだが、徐々に穴を広げていき大幅に規制緩和されていく

・そのうち誰もが「残業代ゼロ」にされるというブラックな法案

・長時間労働を助長する

・残業0って言っても、必ず抜け道は作られる

・年間休日を増やすべき、該当者の年間所得を増やすべき

・派遣の二の舞になる

・残業代がないと生活が出来ない

・営業職を除外にすることを検討していることは、営業職に拡大される道筋があるということ

・24時間働かされる

管理人所感

法律案を見れば、多種多様な働き方を実現し、効率よく成果が得られるように配慮していることは容易に想像出来る。また、健康面に配慮する文面が盛大に盛り込まれていることから労働者を奴隷のように使い捨てにするのではなく、むしろ大事に扱っている印象さえ受ける。つまり現時点では無意味な残業を減らして効率よく仕事をすることで労働者を守る内容であり、この時点で反対派の主張は崩れ去る。もしかしたら本当に反対派の言うように、段階的に所得水準を引き下げ国民総奴隷化への足掛かりなのかもしれない。それを判断するには情報が足りないし、1個人の心の内の思惑など分かるはずもない。だが過去の事実から疑ってかかる姿勢は悪くないし慎重になる必要性はある。

ただ1つ興味深いことを言うとすれば、それは賛成派も反対派も「長時間労働を助長する」と同じ論理を展開していることだ。
賛成派は、残業代の存在がだらだら働くことの誘因となり長時間労働を助長すると主張するし、
反対派は、残業代ゼロ法案が企業に乱用され長時間労働を助長すると主張する。
目的が長時間労働の抑制にも関わらず、両者ともに長時間労働を助長すると言う。進むも地獄退くも地獄ってわけだね。
ただ、現実の問題として長時間労働があるので、第三の解決策を模索するか進むかの2択しかないのではないだろうか・・・

またこの問題を多くの人間は、自分への影響の懸念という観点からしか見ていないが、筆者は(おそらく政府も)この決定がこれから半世紀以上に渡り国家に影響を与える案件だと捉えている。
まあ論を語るにしてはまだ情報が足りな過ぎるし、頭に浮かんでは消えてゆくとりとめもない内容を書き綴っただけなのでアホの妄想だと思って読み進めて頂ければ幸いだ。

まず日本が現在の国際立ち位置を維持出来ている理由は日本の経済力であることを理解しなければならない。
軍事的に弱い日本が多くの核保有国の軍事的大国に肩を並べていられるのも日本の経済力があるためだ。経済力とは金とモノだ。
しかし実態としてその経済を支えているのは、過労死問題を抱えながら、年間3万人の自殺者を出しつつ、長時間労働やサービス労働に耐え働き続ける全日本国民なのだが、大国からすれば日本の経済力は野放しにすれば国際的なパワーバランスを揺るがしうる案件であり当然それを攻撃するのだ。

だからこの問題に対し、私は答えを出せずにいる。
つまり日本を守るのか日本の経済を末端で支え続けている労働者を守るのか、その答えを出せずにいる。
労働者を守るのであれば、日本の経済力は低迷し国際的な立ち位置も失い日本を守れず日本国民を守れないことになる。
とはいえ、このまま多くの自殺者を出しながら世界的に見てもトップレベルの経済を維持し続ける必要があるのか、その狭間で揺れ動く。おそらく政府もそういう状況なんだろう。
しかし、電通をはじめ国内で労災問題が表面化している以上、政府も何等かの手を打たなければならないのであり、その手始めが今回の「残業代ゼロ」制度なのではないだろうか?
いま経済力を落として国際的な立ち位置を失うことはできない、しかし労災問題に手を打たなければならない。そういう矛盾する状況の中で出した改正案というのが、国内で形成されつつある世論「残業を無くせ」に対抗しうる「残業代ゼロ」制度なのだ。
これからの日本は長期的に残業を無くす方向に動くことになるので、その前に残業を無くしても(国際的に見てもハイレベルな)経済を維持出来るように国内の労働環境を変える必要があり、それは成果>>>時間を至上価値とする労働形態のことで「残業代ゼロ」制度の意味するところでもある。まず手始めにやりやすい高度専門職に限定してやっていこうってところか・・

だから「残業代ゼロ」制度は最終結果ではなくプロセスです。

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