【完全まとめ】共謀罪(テロ等準備罪)とは?わかりやすい日本語で解説
平成29年3月21日、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案 」が国会に提出された。
現在は既に可決され、平成29年7月11日に施行予定である。
これはテロ等準備罪・共謀罪と一般的に言われるものであるが、
・共謀とは何なのか
・どういう法律なのか?
・共謀罪の何が問題なのか?
私たちは知らないことが多いと思います。
そこで、共謀罪を巡る議論をこの1ページにまとめることにしました。
政治や法律はよくわからないという方のためにも専門用語は出来るだけ使わずわかりやすい日本語で説明しています。
一度目を通してみてはいかがでしょうか?
目次
共謀とは?
2人以上の者が一定の犯罪を行おうとする合意。
引用元:コトバンク
共謀罪とは?
・何かしらの犯罪の共謀それ自体を構成要件(ある行為を犯罪と評価するための条件)とする犯罪の総称
・日本の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(通称:組織犯罪処罰法、組織的犯罪処罰法)の「第二章 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の没収等」に新設することが検討されている「組織的な犯罪の共謀」の罪の略称
引用元:ウィキペディア
簡単解説
刑法上、「共謀罪」という罪名が存在するのではない。
現在の刑法では発生した犯罪について処罰することが前提となっているため、多くの犯罪が実行され被害が出なければ処罰が出来ない(例外あり)。その犯罪行為を共謀段階から処罰可能にするのが共謀罪である。
2017年「テロ等準備罪」を指して用いられる。
関連用語の解説
■組織的犯罪集団
三人以上の者から成る組織された集団であって、一定の期間存在し、かつ、金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得るため一又は二以上の重大な犯罪又はこの条約に従って定められる犯罪を行うことを目的として一体として行動するもの
■重大な犯罪
長期四年以上の自由を剥奪する刑又はこれより重い刑を科することができる犯罪を構成する行為
参考:ウィキペディア
テロ等準備罪要点
正式法律案名:組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案
テロ等準備罪が共謀罪であると民進党はじめ野党やマスコミは言っているが、広義の共謀罪とは微妙に異なる。安倍内閣が成立を目指す「テロ等準備罪」は共謀段階犯罪実行以前に処罰を可能にするものではなく、犯罪行為が共謀され準備行為を行った時点で処罰を可能にするものである。確かに「テロ準備罪」の前身は共謀罪であるし、共謀段階犯罪実行以前に処罰可能にするという点で従来の法律の慣例を覆す一大事であるが、共謀段階と準備段階では大きな差があることを私たちは理解する必要がある。
テロ等準備罪の究極の目的は国民の生活と安全を守ることであるから(政府説明)、国民が被害を被ってはならずかつての治安維持法のような悪法となってもならない。以下は政府が提唱する「テロ等準備罪」の要点である。
テロ等準備罪要点 | |
目的 | ・テロを含む組織犯罪の防止 ・国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の締結 ・国民の生活と安全を守る |
対象 | 組織的犯罪集団 |
適用される時 | 組織的犯罪集団が二人以上で犯罪の実行に合意し「資金の準備」「現場の下見」等の犯罪実行に向けて準備行為をした時 |
適用される罪 |
277の罪
|
簡単説明
テロ等準備罪は犯罪発生以前の準備段階からの処罰を可能にするもの。
例えば、犯罪組織が爆弾テロを計画し、爆弾を作ったり現場を下見したりテロの準備行為を行い、実際に爆弾を入手し、爆弾テロを実行し多数の死者を出したようなテロ事件の場合、現在の法律では爆弾を入手した段階でしか取り締まることが出来ないが、テロ等準備罪では爆弾を作ったり現場を下見したりテロの準備行為を行った段階で取り締まることを可能にする。
爆弾テロのような場合は爆弾を所持した段階で爆発物取締罰則違反に該当するが、無差別殺人テロのようなテロ事件の場合、どれだけ早期に計画の情報を察知したとしても実際に事件が発生し大量の死者が出るまで取り締まることが難しく、そのような犯罪を未然に防ぐことを可能にする法案である。
共謀罪=テロ等準備罪を指す言葉として用いられるがテロ等準備罪は広義の共謀罪とは微妙に異なっている。
国際組織犯罪防止条約(TOC条約)とは
政府はテロ等準備罪の成立の目的の1つに国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の締結をあげている。国際組織犯罪防止条約(TOC条約)とはパラルモ条約とも呼ばれ、組織的犯罪集団、資金洗浄、公務員の腐敗行為等への対抗措置などについて定める国際組織犯罪防止条約である。
国連加盟国193ヶ国のうち182ヶ国が締結し、締結していない国はイラン、南スーダン、ソマリア、コンゴ共和国、ツバル、フィジー、ソロモン諸島、パラオ、パプアニューギニア、ブータン、日本の11ヶ国で先進国では日本だけである。
この条約を締結するためには、「物質的利益を得ることに関連する目的のため重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意することであって、国内法上求められるときは、その合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの」、「組織的な犯罪集団の目的等を認識しながら、組織的な犯罪集団の犯罪活動等に積極的に参加する個人の行為」のどちらかを最低限犯罪化する必要がある。
簡単解説
国際組織犯罪防止条約(TOC条約)とは、組織的犯罪を防止する条約。
先進国で加盟していないのは日本だけ。
条約を締結するためには「共謀罪」を犯罪化しなければならない。(共謀罪である必要はない)
問題点
以下に一般的に言われている問題点を掲載すると共に果たしてその問題点は本当に問題点と言えるのかどうかに関して客観的な立場で解答していきます。法学上間違いがある可能性もあるためあくまで鵜呑みにせず参考にして頂ければ幸いです。
また法学上解釈に何か間違いがある場合や別意見などがあればコメントにて報告頂けると幸いです。
責任を持って修正及びまとめさせて頂きます。
・テロ対策という名目であるにもかかわらず、法案内に「テロ」「テロリズム」という文言がない
⇒「テロ等準備罪」は法律案にもともと「テロリスト集団」という文言がなかったとし否定派は度々批判するが、厳密にテロリスト集団と対象を絞った場合、法の抜け穴を掻い潜った組織的犯罪集団に対して適用出来ず役立たずとなってしまう可能性がある。だから「『等』の組織犯罪集団」を対象としなければならないのだ。
・対象となる277の罪にはテロ対策と言えないものが含まれている
「重大な犯罪」とは、長期四年以上の自由を剥奪する刑又はこれより重い刑を科することができる犯罪を構成する行為をいう。
日本の刑罰法規では法定刑が幅広く、対象となる277の罪は長期四年以上の自由を剥奪する刑又はこれより重い刑が課される可能性があるためにテロ対策と言えないものが含まれているのであり、同犯罪でも微罪から重大犯罪まで様々で量刑の相場も判例によって決まるためである。
・一般国民の表現の自由が侵害される可能性がある
⇒これに関しては否定することは難しいが、政府はそれを避けるためにも組織的犯罪者集団と犯罪の準備を織り込んでいるのであり、犯罪行為を実行しない一般国民には無関係であると言える。だから話し合うことで罪になることはないしデモなどを行って罪になることもないので表現の自由が侵害される心配はないだろう。あくまで犯罪者及び犯罪組織を実行以前の段階で処罰可能にするものである。
・監視社会になる可能性がある
⇒これに関しても否定することは難しい。監視社会とは、警察官や軍隊などにより過激な監視が生じた社会のことである。法務省の見解によれば、組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の共謀行為に限り処罰することとされており国民の一般的な社会生活上の行為が本罪に当たることはなく、また、組織的な犯罪の共謀罪の新設に際して、新たな捜査手段を導入するものではないため監視社会になる心配はないという。つまり捜査に関する法令(刑事訴訟法等)に変更がなければ監視社会になることはないということだ。そして逮捕や捜索・差し押さえなどの強制捜査には裁判官による令状が必要となるため適正は保たれやすい。しかし考えなければならないのは組織的な犯罪集団をどう解釈するかである。一応条文では、『三人以上の者から成る組織された集団であって、一定の期間存在し、かつ、金銭的利益その他の物質的利益を得るため一又は二以上の重大な犯罪又はこの条約によって定められる犯罪を行うことを目的として一体として行動するもの』、法案では『その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪(280以上)を実行することにある団体』と定義されているが・・・
賛成派の意見
- 共謀罪に反対する人は、何かやましい事がある人たち
- 世論調査でも賛成優勢である
- 東京オリンピックも近づいているので何らかのテロ対策が必要
- 一般人は対象外なので問題ない
反対派の意見
- テロ等準備罪は話し合うことさえも場合によっては罪となり罰することを可能にする共謀罪法案であり必要ない
- 準備を取り締まる法律は既に存在する
- 監視社会になる可能性がある
- 人権が侵害される可能性がある
- 警察による過剰な捜査が行われる可能性がある
- 国際組織犯罪防止条約の締結に共謀罪は必要ない
海外の反応
イギリスの反応
- この法案は必要だ
- 日本の対テロ共謀罪を支持する
- どうでもいい
- 日本政府は本当に素晴らしい仕事をした
- 共謀罪なんて無意味だろう、いまのイギリスを見ろ
- 世界は日本から学ぶべき
- 言論の自由を妨げる危険がある
- 日本人は実際に爆破を経験してないからテロの心配をしてる人はいないだろう
国連の反応
プライバシーが侵害される恐れに配慮した措置を整える必要性がある
海外との比較
・アメリカの事例
⇒アメリカには共謀罪があります。アメリカの共謀罪が効果を発揮するのは、「二人以上の者が何らかの犯罪を犯すこと等を共謀し、そのうち一人以上の者が共謀の目的を果たすために何らかの行為を行ったとき」です。準備行為をした段階で処罰の対象となるようですね。また、アメリカの捜査機関は共謀罪立件のために、おとり捜査を使うがこれに一般人が巻き込まれる事例もあるそうです。
・イギリスの事例
⇒イギリスには共謀罪があります。イギリスの共謀罪が効果を発揮するのは、「ある者が他の者と犯罪行為を遂行することにつき合意をしたとき」です。合意をしたら罪になるようで日本やアメリカとも異なります。
・ノルウェーの事例
⇒ノルウェーにはテロを事前に失せぐための法律が複数あります。例えば、大使館の爆破計画をしようものなら実行前に逮捕されます。テロ活動のリクルート・参加・支援をしようものなら捜査対象となるでしょう。しかし過剰な捜査は起きておらず、その理由は外部による監視体制が整っているからです。警察独断での操作は不可能で裁判所での許可→捜査→監視機関の審査というように第三者機関によってしっかりと監視されています。
・ブルガリアの事例
⇒ブルガリアはノルウェーと同様国際組織犯罪防止条約締結に際して、共謀罪を新設した国です。予備行為の処罰を大幅に制限していたり、捜査・訴追権限の濫用を防止する各種の制度を充実させたりするなどの対策をとっています。
・その他の事例
⇒他にもカナダには共謀罪があります。共謀罪がなくとも世界各国には組織的犯罪組織を取り締まるなんらかの法律が有しています。例えばドイツでは「犯罪団体の結成の罪」などがありますしフランスでは「凶徒の結社罪」があります。イタリヤやドイツ、ロシア、中国、韓国、ニュージーランド、オーストリアなどでも参加罪が制定されています。
治安維持法との互換性
治安維持法とは、昭和16年(1941年)、国体(皇室)や私有財産制を否定する運動を取り締まる日本の法律である。現在は廃止されている。
治安維持法は国体を変革することを目的として結社を組織した者、結社の役員、指導者や、組織の準備行為を行ったものを処罰対象とし、官憲により「準備行為」を行ったと判断されれば誰でも犯罪者にできるようになった点で悪法と言われている。
テロ等準備罪も誰でも犯罪者にしたてあげることが出来る可能性がある点と、準備段階から処罰が可能な点から治安維持法の再来と言われ批判される。
参考:朝日新聞
簡単解説
共謀罪は「現代の治安維持法」と批判される。
管理人所感
まず前提として筆者は賛成派でもなければ反対派でもない。
客観的立場から共謀罪を巡る論争をみた場合、やや政府の意見に分があるように感じる。
問題点や反対派の意見は、実は完全に論破出来るものであったり、共謀罪それだけでは成り得ないものであるからだ。
しかし賛成派も反対派も共通して言えることは、この問題を自分の手の届く範囲でしか見れてないということだ。
勿論、一個人ならそれで良いのかもしれないが国家運営という政治の視点から見ると違うのである。
例えば・・・
政府の言う通り、日本は2020年に東京オリンピックを控えており諸外国からたくさんの外国人が来日することが予想される。
そんな中、何等かの形でテロの計画を入手したにも関わらず法律上取り締まることが出来ずその結果他国の国民が大量に亡くなる事態になってしまったら?
各国が納得する説明が出来るだろうか?またそれは長期的に見て国体及び国民の生活と安全を守ることに繋がるだろうか?
或いは、共謀罪がないために日本が組織的犯罪組織及びテロリストの桃源郷又はアジトとなり、諸外国にテロ国家のレッテルを貼られてしまったら?
それは長期的に見て国体及び国民の生活と安全を守ることに繋がるだろうか?
或いは、共謀罪がないために国際組織犯罪防止条約に参加出来ず、その結果日本が国際社会から孤立してしまったら?
それは長期的に見て国体及び国民の生活と安全を守ることに繋がるだろうか?
これからの世界は「テロリズムに対してどう関わるか」が重要な案件であると理解し政府はそのための準備を進めていると認識する。
特定秘密保護法・・パングラディッシュテロ・・軍事費増・・選挙権年齢の引き下げ・・共謀罪・・国際組織犯罪防止条約・・
過去の事実から政府の意向を導き出し、その先に存在する無限大のシナリオと日本に待ち受ける運命を考慮し、共謀罪は黙認する。
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